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日刊木材新聞社 創刊70年記念セミナー ~日本の林産業の将来~

 日刊木材新聞社は6月24日、創刊70年記念セミナー「日本の林産業の将来」を開いた。今井敏林野庁長官、尾﨑正直高知県知事、堀川保幸中国木材会長の3人が講演し、会場には業界関係者など約150人が集まった。成熟した日本の森林資源の活用、中山間地域など地方の活性化をテーマに、国、地方、企業それぞれの立場から、国産材活用拡大に向けた様々な取り組みや構想が語られた。
今井敏林野庁長官

 今こそ林業を成長産業に

 

 林野庁は、林業の成長産業化を安倍政権における成長戦略及び地方創生の1つと位置づけ、施策を進めている。 木材の需要創出については、CLTの開発と普及、公共建築物等の木造化、木質バイオマスのエネルギー利用という大きな動きが3つある。 CLTは、欧米ではマンションなどの中高層建築物に利用されており、木材の利用量も多いだけに新たな需要先になると期待されている。CLTはコンクリート建築物よりも軽いため基礎工事等の簡素化が可能で、工期短縮の点もメリットとして大きい。 公共建築物等木材利用促進法ができてから今年で5年目が経ち、全国各地で公共建築物の木造化が行われており、最近では都市部でも木造・木質化の動きが広がっている。 再生可能エネルギー固定価格買取制度の後押しもあり、現在、木質バイオマス発電所の整備が進んでいる。燃料に使われる多くが山に残置されていた林地残材などで、資源の活用面はもちろん、その運搬やチップ化などで地域に新たな雇用を創出することができる。 供給面の取り組みでは、零細な森林所有者をまとめることが国産材供給の拡大には欠かせない。作業の効率性や安全性を高めるために高性能林業機械の導入の支援なども行い、施業集約化と合わせて効率的な作業を目指している。機械化については、安全性の面でも非常に重要な意義がある。 国内の森林資源は成熟し、円安などで追い風は吹いているが、その需要がすぐに国産材に戻ってくるとは限らない。他の材料に取ってかわられる可能性も十分ある。他の材料を木材に転換させるような積極的な取り組みが必要とされる。 現在、新たな森林・林業基本計画作りを進めているところ。日本中の衆知を合わせ、転換期の森林・林業行政にふさわしい政策枠組みを作れるよう検討し、林業の成長産業化を実のあるものにしていきたい。

尾﨑正直高知県知事

 林業再生で地方創生

 

 知事就任から約8年間、「林業の再生なくして高知県の再生なし」という思いで取り組んできた。その基本コンセプトは地産外商。県産材を県外で販売し、高知県にとっての外貨を稼ぐことで拡大再生産につなげていこうと考えた。まず地産の強化として、川上における原木生産量の拡大を目指し、施業の集約化を狙った「森の工場」を設立し、森林施業プランナーの育成、森林組合の経営力を強化した。川下では、A材加工体制の強化を目指し、銘建工業の協力を得て13年8月に高知おおとよ製材が稼動した。高齢化率30%を超える山奥の町で、現在45人もの新たな雇用が生まれ、地域経済にとって非常に大きな力となっている。C、D材活用では、園芸農業でのバイオマス熱利用や木質バイオマス発電を作った。高知県の園芸ハウスの燃料費は年間で約60億円。これが中近東の産油国ではなく、県の森林・林業に流れれば、その効果は小さくない。バイオマス発電所は2ヶ所が稼動し、その経済効果は1施設あたり年間約12億円、雇用誘発効果は年142人と非常に大きい。外商の強化では、県外に土佐材の流通・営業拠点を設けたり、土佐材を使った家づくりの推進などを行っている。内航船とトレーラーを使った製材品の首都圏への定期輸送も、月に1~2回程度のペースで行っている。これらの効果があらわれ、原木生産量は2010年度までの年間約40万立方㍍から、14年度には約61万立方㍍まで拡大した。現在、15年度は72万立方㍍を目指している。施業地の集約化と拡大、事業体の育成、高性能林業機械の導入など、原木の生産性拡大にも取り組んでいる。労働力の確保と育成のため、今年4月には高知県立林業学校も立ち上げた。原木増産、加工、流通、担い手育成の好循環を拡大することで、林業の再生による中山間地域の再生を成し遂げたい。

 

堀川保幸中国木材会長

 世界の木材業界と競う

 

 製材業では物流コストが製材コストの倍以上かかるため、物流を考えなくてはならない。だからこそ、当社は、本社工場や鹿島工場、千葉や大阪、名古屋にある物流センターも全て海岸線に置いている。特に現在はプレカット流通が主流となっており、多品種即納欠品なしという方式でなければ、かなりコストがかかってしまう。船で運んで、出来る限りプレカット工場に直接納められる体制でなくてはならない。 日本国内の需要は、少子高齢化や住宅の高耐久化を背景に、将来は年間住宅着工戸数20万戸の時代がくると考えている。その時には、やはり輸出を考えなくてはならないが、海外との競争になる。世界の木材産業と互していくためには、コスト競争力が欠かせない。その点で、バイオマス発電と木材加工の組み合わせは非常に合理的だ。それも、小規模の組み合わせではなく、規模が大きくなるほど利益はあがる。バイオマス発電には、自社の廃材を利用すれば燃料に運賃をかけないため、収益面でより有利になる。国産材製材輸出時代のモデルになるのが日向工場だと考えている。国産材輸出は、現在は原木輸出が多いが、いずれは製品輸出に転換していかなくてはならない。丸太をコンテナに積むと隙間が多く、半分は空気を運ぶことになってしまうからだ。製品なら隙間なくいれることができ、運賃がムダにならない。販売面では、まず海外の顧客が木材をどう使っているか、その末端の使い方を知った上でニーズに合う製品をつくり、提案していかなくてはならない。需要の継続のためには欠品があってはならない。そのためにも、現在自社林の保有を進めている。現在4,385ha所有し、継続的に増やしている。伐採コストの削減は今後の課題だが、欧州などを参考に、世界と競争するための方法を考えていく。

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